事業再生と企業再生、民事再生、何が違うの?

事業再生と企業再生、民事再生、何が違うの?

事業再生って何でしょうか。企業再生って何でしょうか。

事業再生界隈の用語は混乱しがちです。

事業再生とは、「事業」の再生。
企業再生とは、「企業」の再生。

企業とは、法人、会社のこと。(会社=法人と思っていいです)

企業の中に、ひとつの事業だけのこともあれば、複数の事業があることもあります。事業以外の資産負債があることもあります。

なので、企業再生、と言うと、法人格の再生のみのように捉えられるので、最近は、事業再生、と称されることが多くなりました。
こうした事業(企業)再生の根本は、事業を救済することであり、法人格の再生は、本来的にはどうでもいい(というと語弊もありますが)と考えられるので、事業再生がもっともしっくりくる用語となります。

一方で、現場では、厳密な使い分けはされておらず、事業再生、企業再生、どちらも使われます。

事業や企業の「再生」ってどういう意味?

事業再生の「再生」って改めて考えると多義的で、また、事業再生の業界で使われるのは、狭い意味となります。

一般用語として、事業「再生」といえば、売上や利益の増進、をイメージするかと思います。リストラをイメージする方もいるかも知れません。

しかし、事業再生業界では、この「再生」の意味は、
  1. 事業運営資金を確保する、特に、債務カット*1をする、
  2. その資金負担軽減でもって、事業構造を改革し、継続的な利益が計上できる事業体質にする
という意味で使われます。

単に債務カットをするだけでなく、売上、利益の増進のために、経営をリーン(筋肉質)にし、意思決定が合理的に行われるようにしたり、経営管理の強化をすることになるのです。

「債務カットはなるほど弁護士や公認会計士の出番はわかるけど、事業構造改革なんてできるの?」
と言う声を聞くこともあります。

なるほど、弁護士、公認会計士が、事業を継続して運営する経営者として優秀か、というと一般論としては否定されるものと思います。

しかし、事業再生にかかわる専門家は、事業の非効率性を検出し、それをポジティブな方向性となるよう転換する力量は持っています。第三者だからこそ、気がつく側面があるのです。いや、それはひょっとすると、経営者が既に気がついている事項かも知れません。しかし、資金不足等の理由で、これまでできなかったことなのです。それを、事業再生手続の中で実現させるお手伝いをするわけです。

弁護士、会計士が直接営業や広告をして、仕事をとってくるか? しません。
でも、それがやりやすいような環境作りをして、経営者、従業員が頑張れる素地を作っていくのが、事業再生の専門家です。

そこから先は、事業家が頑張ることが必要です。専門家が継続して事業を運営するわけではないのです。その点で、巷にあふれる、"会社再生請負人"のイメージとは異なると思います。

請負人の方々の事業に対する取り組みは尊敬に値する面はあるものの、役割が異なります。
我々事業再生プロフェッショナルは、その素地、環境を作るのが仕事です。

病院の救急ERのように、危機時期における事業が、再び歩き出せるように手術するのが仕事です。

これが、事業再生の「再生」の意味なのです。

*1 : 債務カットをしなくても、リスケ(金融債務の返済条件の変更、引き延ばし)でもって、運転資金を確保することもありますので、債務カットありきというわけでもありません。

民事再生

上記を踏まえると、民事再生は、民事的な手続で、事業の「再生」を行う手続と理解できます。
裁判所の関与のもと、透明性のある手続で債務をカットし、それをもって事業構造改革を実施し、利益を計上できる企業体質とする。ということです。

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