財産評定の種類(民事再生、私的整理、会社更生)

 
企業再生、事業再生、倒産法制では、「財産評定」が必須となりますが、手続によって、評定の中身・方法が異なります。

財産を評定する意義

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どの手続にも共通する意義は、
  • 債務者(会社)の財政状態を正確に把握するため
というものです。

誰が把握するため、でしょうか?
会社自身、代表者(管財人も含む)はもちろん、債権者などの利害関係者に会社の財政状態を把握してただくためです。
再生計画案に賛成をいただくための数字の基礎として必須ということはもちろんですが、まずは、その手続を進めることについて、ご理解をいただくにも必要となります。

会社の財政状態を明らかにしないことには、その手続を選択する意味もわかりませんし、その選択が適切であるかどうかがわかりません。

財政状態が悪いからこそ、企業再生の手続を採用するわけですが、財政状態の悪さの程度や金額も様々であり、その程度に合わせた手続選択をする必要があり、それを関係者に理解していただく必要があります。

手続によって異なる意義

財産評定*1という用語も、手続によって意味、意義が異なる部分があります。
 
財産評定の意義の違い
民事再生会社更生・私的整理(準則型)私的整理(非準則型)
意義清算価値の把握会社帳簿の基礎・実質債務超過額の把握
財政状態を時価で把握する・債権者の権利変更の基準の把握
価値水準清算価値時価

*1 : 私的整理では正式用語として「財産評定」というものはありませんが、実態貸借対照表を作成することが、財産評定と同じものとして取り扱われます。

清算価値の把握

民事再生手続においては作成される臨時貸借対照表は、財産評定一つです。その基準は清算価値(処分価格)です。
一方で、会社更生、私的整理では、財産評定による貸借対照表とは別に、清算貸借対照表も作成されます。

即ち、民事再生においては、時価による貸借対照表は作成されないことになります。もっとも、清算価値の把握のためには、いったん時価を把握する必要はあるので、実態として時価による測定はするものの、正式な書類として提出されることはありません。

この点が、民事再生が手続き的に「軽い」と言われるところのひとつで、単一の「財産評定」によって、手続が進められます。

また、民事再生では会社法、税務の帳簿とは関係のないところで作成されますので、その点でも、会社法や税務の規定が及ばないから、柔軟な対応ができるようになっています。

逆に、会社更生、私的整理においても、清算価値保障原則は必要とされますので、時価による財産評定のほか、清算価値による清算貸借対照表が作成されます。

このように、同じ「財産評定」という用語でも、その中身が異なるので、注意が必要です。

いつの時点の財政状態を把握する必要があるのか。

事業を継続している企業の財政状態は、日々変化しますので、どこかの時点で区切る必要があります。

会計技術的には、ある時点での仮決算が必要となります。
手続によっては(特に私的整理では)、当該時点の選択の余地がある場合があり、直近決算や、直近の月次決算ベースのこともあります。

会社の決算書ではダメなのか。

会社法又は税務で定められている決算書は、そのまま財産評定としては機能しません。

手続上、改めて作成する必要があります。
監査法人等の会計監査を受けている場合には、ほとんど修正がない場合もありますが、それでも会計監査上の判断と、企業再生における財産評定上の判断は異なるものもあり、完全一致することはほとんどありません。
また、法的手続の場合には、会社の決算日、月次決算日とは異なる日付での作成が求められることが通常であり(偶然の一致はあり得る)、その時点修正も必要となります。

慣れた公認会計士を選任しましょう。

手続によって財産評定の意義も方法論も異なります。
私的整理は得意でも法的整理は苦手な人もいます。その逆もいます。

当事務所は、法的整理も私的整理も両方を理解する会計士が所属しています。
どうぞお気軽にお声がけください。

企業再生:不利な契約を解除する

不利な契約を解除する方法/民事再生/会社更生

事業構造を改革しようとした時、仕入先や外注先との不利な契約を解除したい時があります。
例えば、一定量以上仕入れないと単価が高いとか、違約金が発生するなどです。
事業所の移転などに伴う、オフィスや工場の賃貸契約の解除による違約金も避けたいものです。

しかも、一方的な解約/解除の場合、大きな違約金が発生してしまい、そこまで踏み込めない場合があります。

他に有利な仕入先、外注先があるにもかかわらず、乗り換えができないことから、事業構造改革の支障となってしまいます。

民事再生法では、そのような違約金は、過去の原因に基づく債務として再生債権として処理することができます。

再生債権としてしまえば、カット後の弁済は必要であるものの、限りある弁済原資をほかの債権者と分け合うに過ぎないので、再生会社としては、前向き用の資金を使うことなく、処理することができます。
再生債権となる請求権-民事再生法84条

84条第2項第3号には、「再生手続開始後の不履行による損害賠償及び違約金の請求権」も再生債権と明示されています。

再生債権ですので、議決権があり、カット後の一定額は支払わなければならないものの、当該違約金を全額払う必要はなくなります。

この不利益契約の整理機能は、私的整理にはない、法的整理ならではのものです。

私的整理だと仕入先、外注先は原則として手続きに取り込まないので、このような違約金が発生してしまうと100%払わなければならなくなり、前向きの資金繰りに、悪い影響を及ぼしてしまうのです。

事業の抜本的な改革をしようとしたときには、法的整理は強力な味方となってくれるのです。
取引先も巻き込む以上、その欠点だけでなく、利点も大きいものなのです。

泉会計事務所-民事再生、事業再生

民事再生手続の基本

破産よりはマシ-民事再生の基本

民事再生のみならず、企業再生の基本のひとつとして、清算配当率保障、という概念があります。

これは、債務カットをしていただくにあたって、最低でも破産した場合の配当率を上回ることが要請される、というものです。

民事再生法では、「再生債権者一般の利益」という文言でもって、この清算配当率保障が定められています(一般の利益、というのは清算配当率保障を含む、もっと広い概念です)。
民事再生法第174条(再生計画の認可又は不認可の決定)

したがって、債務カットを生じさせる企業再生スキームでは、この破産配当率(清算配当率とも呼ばれます)を試算し、それを上回る弁済をすることが要請されるのです。

その清算配当率を算定するための基礎が、民事再生法の財産評定です。
はじめての財産評定-会社版民事再生手続総合情報

泉会計事務所-事業再生
はじめての民事再生-泉会計事務所
民事再生手続と公認会計士-泉会計事務所