会計プロフェッショナルの活躍フィールドと未来

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会計プロフェッショナルの活躍フィールドと未来


「会計ビッグバン」が会計士需要を伸ばした

 2001年から2002年にかけてのアメリカのエンロン、ワールドコムの粉飾決算事件の与えた衝撃の大きさを記憶している人も多いのではないでしょうか。

大手監査法人のアーサー・アンダーセンが、コンサルティング部門ではエンロンやワールドコムに経営上のアドバイスをしながら、一方の監査部門ではエンロンなど の会計監査を担当し、結果として粉飾決算を共謀するという前代未聞の不祥事に発展した、会計の歴史に残る大事件。この不祥事をきっかけに、監査及び証券業界に 対する規制を強化した「サーベンス・オクスリー法(通称:SOX法)」が制定され、上場企業会計監視委員会が設置されて既に数年がたとうとしています。

 一方、日本で2000年前後から行われた一連の会計基準の変更(通称:会計ビッグバン)によって、日本の会計基準は国際会計基準により接近し、 カネボウやライブドアなどの粉飾決算が後を絶たず、2007年には大手証券会社の日興コーディアル証券でも大掛かりな粉飾決算が発覚するという事態に陥り、 同社は外国資本の傘下入りして生き残る道を選ばざるを得ませんでした。

 激動の時代を迎えた会計の世界の現状や会計士の今後の活躍の方向性について、国際会計士連盟(IFAC)会長・日本公認会計士協会会長を歴任し、 現在は中央大学大学院・戦略経営研究科特任教授をつとめる藤沼亜紀(ふじぬま・つぐおき)氏にお話を伺いました。

 「監査の厳格化、会計ビッグバンに対応する仕組みとして注目を浴びたのが、規律に沿った体制の整備・業務プロセスの透明化を図る内部統制です。 この内部統制の強化により、会計監査人は従来のように提出された財務諸表をチェックするだけではなく、財務諸表の作成過程もチェックしなければならなくなりました。 また、監査を受ける企業側でも、財務諸表の内容の正確さを証明するために確認書を提出しなければならなくなり、双方の業務が一気にすさまじい量に膨れ上がったのです。 企業側は、財務諸表の内容に虚偽記載が見つかった時には、その経営者は職を失うだけではなく、株主代表訴訟を起こされる可能性が高いというリスクを負うことになります。 会計士側も、会計のプロとしての高い独立性を保ち、企業業績の透明性を確保する立場を貫く姿勢が望まれています。」

 “会計のプロフェッショナル”としての公認会計士の責任はより重くなり、また一方で、会計士に対するビジネス上のニーズはより高まりつつある、という現状が あるようです。

会計士が活躍できるフィールドは多い

 ここで、会計士が活躍できる主なフィールドを見ていきましょう。

①基盤業務としての監査業務
②M&A支援、内部統制支援、ITセキュリティー支援などのコンサルティングやアドバイス業務
③行政や会計士協会などの公的機関における会計監査基準の開発や整備への参加、および訴訟支援などの業務
④タックス・プランニングや国際税務などの税務業務やその支援
⑤環境会計、CSRなどの監査業務以外の保証関連業務
⑥企業や公的機関などの財務担当者や監査役、外部取締役などとして企業に所属して行う業務
⑦教育者、研究者としての教育機関へ所属して行う啓蒙活動


◆公認会計士有資格者の職業選択の代表例◆


 まずは、公認会計士の主業務とされる会計監査。「監査業務を学ぶには、やはりまずは監査法人に就職するのがよいでしょう」と藤沼氏は述べています。 「監査法人では、会計士として生きていくために必要な教育が受けられるからです。そして、クライアントである多種多様な会社に行き、経験を積んでから、 将来を選択する。監査法人に残るか、個人で開業するか、企業に就職するかは、その時に決めればいいのです。」

 また、会計ビッグバン以降に登場した「コーポレートガバナンス」「内部統制」「環境会計」「CSR」などの新しい考え方は、従来の企業会計の枠組みを 超えたジャンルを会計の世界にもたらしました。最近では、監査法人を退職した後に、内部統制や税務などのコンサルティング事務所を開業する会計士も増え ています。さらに、上述の藤沼氏は次のように語ります。
「分野を特化した事務所に入所する者もいれば、弁護士と連携する事務所を開設する者もいます。東京証券取引所や金融庁のようなところにも会計士が 活躍できる場はたくさんあります。また、これまで財務的な規律が少なかった社会福祉法人や医療法人、農業系の団体などでも、複式簿記の概念による会計の 概念が重要になってきます。公的機関の領域でも、会計士が必要とされる時代に突入しているのです。」

 一方で、企業活動の国際化に伴い「グローバル展開に耐えうる会計」へのニーズも高まっています。国際会計基準を採用する国は100カ国を超過。アメリカ では国際会計基準への統合が発表され、日系企業においても、いったん米国会計基準にコンバージョンした会計を国際会計基準へ再度コンバージョンするとこ ろも続出しています。「もし、他国の金融機関などに提出された財務諸表に欠陥が見つかれば、その国での企業活動は非常に不利になります。そのような不利 な状態にならないよう、監査法人に所属する、しないにかかわらず、常に海外の会計事情にも目を配っておけるだけの公認会計士の質の向上が求められています。 ということは、試験内容の国際会計基準化を進める必要があり、日本の会計基準に慣れてきた会計士の教育、企業側の会計教育、さらに、高等教育機関などの 学校教育の場における会計教育も変えていかねればなりません。」

 課題が山積し、地殻変動を起こしている会計の世界。日本、及び世界の会計プロフェッショナルな立場から公認会計士がどのように仕事と携わり、どのように 活躍していくかという問題は、ひいては日本の国力増強にもつながる課題といっても過言ではないでしょう。