「米国株式会社」は継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる状況?

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「米国株式会社」は継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる状況? 
- キャッシュ・フロー計算書の観点から -
佐藤桂事務所  佐藤 桂
2008/10/22
 
米国発の金融危機とリセッション懸念が世界経済を大きく揺らしています。基軸通貨国である米国の経常収支赤字は、1983年の世界的な景気回復後、 拡大し続け、その2007年までの25年間の合計は△6,668,094百万米ドル(米国商務省経済分析局(BEA)公表の経常収支(Current account)の合計)に上ります。

「米国株式会社」がもしキャッシュ・フロー計算書を作れば、これは「営業活動によるキャッシュ・フロー」の大赤字に相当します。長期にわたり黒字転換の実績も アテもないのですから、民間企業ならとうの昔に「継続企業の前提に(超)重要な疑義」アリとされ、監査人のなり手がなく、上場廃止・倒産です。が、基軸通貨国で ある米国株式会社は、この赤字を埋めようと、やり手の財務マンたちが「強いドル」を掛け声に官民上げて世界中にドルを売り、外貨をかき集め、「投資活動による キャッシュ・フロー」+「財務活動によるキャッシュ・フロー」を黒字にし続け、さらに対外資産の評価益にも助けられて、対外純債務の増加を最小限に抑えてきました。

しかし、昨今、その金融技術の産物の一つであったサブプライムローン関連商品に対し、世界中が巨額の売却損・評価損を次々に計上しています。そのため、米国株式 会社の金融商品全体、延いては米ドル換算を通じてグローバルに取引される世界の金融商品全体に対する市場の信頼が低下し、かつ、グローバルに短期間で現金化(手仕舞い)されてしまい、金融市場の形成する「公正時価」に信頼リスクや流動性低下のディスカウントが大きく反映されるようにさえなってきました。

この結果、米国株式会社の新規の「財務活動」(=海外資金調達)は、重大な局面を迎えつつあるように思います。放っておけば、対米不信からドル安を招きやすくなります。 (実際は通貨介入などもあるため一本調子のドル安にはならないのですが。)一方、米国株式会社が信頼を取り戻そうとすれば、民間企業と同様、営業キャッシュ・フロー (=経常収支)の黒字化が一番です。その意味ではリセッションによる米国の消費減・輸入減は好都合ですが、これは同時に世界の対米輸出の減少も意味し、今度は米国 以外の国々が持ちこたえられません。米国株式会社の営業キャッシュ・フロー赤字とGoing concern問題は、サブプライムローンによる行き過ぎた住宅投資が引き金となって、 否応なく全世界を巻き込みつつ、世界経済を大きく転換しようとしているのです。

日本としては、ドル安と対米輸出の鈍化の両方に耐えなければなりませんので、お家芸の技術力や商品力に磨きをかけ、対新興国輸出を着実に拡大するとともに、それでも 避けられそうにない世界的な景気減速に備えてより一層慎重な投資判断やコスト管理が必要と思われます。政府の効果的な財政政策も大いに望まれます。
 
<佐藤桂 プロフィール>
佐藤桂事務所 代表
1964年生まれ。宮城県出身。東北大学経済学部卒。86年大手監査法人に入社、90年公認会計士登録。93年同法人ニューヨーク事務所に出向。96年監査法人トーマツへ転職。同年ソフトバンク(株)に出向、97年同社常勤監査役。2000年同社グループ会社取締役を経て、同社合併に伴い、03年ソフトバンクグループ会社管理本部本部長。07年から現職。
現在、ベクター(株)社外取締役、(株)カービュー社外監査役、ジーディーエス・ジャパン(株)監査役も兼務。