各界で活躍する公認会計士 田中達人さん

各界で活躍する公認会計士 公認会計士というハイスキルな資格と経験を活かし現在様々な業界で活躍している皆様の諸先輩方に会計士としての経験の活かし方、キャリアの広げ方ど興味深いお話を伺いました

異文化コミュニケーションの難しさを感じた“事件”

ベトナムでの思い出深いエピソードなどあれば教えてください。

上司のもとに、私を指した怪文書もどきの告発状が届いたことがありました。真面目にやってきたつもりなので、大変驚いたのですが、これが異文化コミュニケーションの難しさなのでしょう。じつは、あるお客様から受けていた節税に関する相談が背景にありました。クライアント企業の子会社に、あるマネージャーの方がいらしたのですが、節税スキームを実行するにあたって各種の資料を用意していただく必要があった時に、その方に一時的に仕事の負荷がかかってしまっていたのです。「忙しくなったのは、田中のせいだ」というわけで、告発状という形での抗議となったようでした。クライアントに説明して、先方の社内で問題解決を図ってもらいましたが、日本ではまず考えられない事態ですね。

ベトナムでは、日系企業の幹部との会食やゴルフといったお付き合いなども含めて、非常に充実した日々を送ることができました。じつは赴任直前に結婚したため、ホーチミンが新婚生活の場でもありました。住まいは外国人用のアパートで、専用のプールやレストランもあり、メイドさんが部屋の掃除をしてくれる環境。当初、不安そうだった妻も、すぐに日系企業の奥様方と仲よくなり、地元の市場に出かけて珍しい魚やフルーツを購入してくるなど、生活を楽しんでいたようです。

愉快なタイ人だが、南国気質にハラハラ

次の勤務地はタイですね。タイはどんな仕事環境でしたか。

タイは“アジアのデトロイト”と呼ばれていて、自動車会社とその関連産業の企業が多数進出しているところです。このため、外資系企業も昔から多数進出していて、タイの首都バンコクにあるPwC の事務所は、スタッフが1,000人を超える大規模なところでした。世界中の国から会計士が来ていましたが、日本人は私と同僚1人、上司2人の計4人。この4人が中心となり、タイ人のスタッフとともに日系企業にサービスを提供していました。

タイでは格別“事件”もなかったのですが、ベトナムよりもさらにのんびりした気質があり、日本人の感覚で物事を進めようとすると、うまくいかない面もありましたね。事務所内では私たち日本人がカレンダーを睨んで眉間に皺を寄せている中で、タイ人たちはみんなニコニコ。本当に愉快な人たちなのですが、仕事はなかなか進みません。ここでも根気よく、仕事を急ぐ必要があることを説いて理解を求めました。

中国語の飛び交う中で、税制の相次ぐ改正に対応

次は北京ですね。また違った環境だったのではないでしょうか。

ベトナムで2年、タイで2年過ごし、もう少し外国での経験を積みたいと考えていたところ、北京のPwC で日本人を求めているという話があり、手を挙げました。当時、経済成長を確実にしはじめた中国は脚光を浴びていて、進出する日系企業も既に増えていたので、そこで仕事をするのも面白そうだと考えたのです。北京でも公用語は英語でしたが、中国人スタッフが大半なので、日常飛び交っているのは中国語でした。

中国の税制や法律は頻繁に改正が行われ、そこで苦労する日系企業がたくさんありました。私たちも税制や法律の改正があるたびに勉強してクライアントにポイントを指導しなければならないので大変でしたね。重要な情報は日本語に翻訳してニュース配信したり、セミナーを開いて説明したりしていました。

PwC の中国人スタッフはなかなか優秀な人たちで、のみ込みも早く、仕事もきちんとこなしてくれました。ただ、自分の非を認めない人も多く、間違いは間違いと指摘して、納得してもらうのに少々骨が折れました。いまの仕事でも、クライアント企業の中国子会社の監査を頼まれることがあるのですが、中国人スタッフと協力して仕事をする時のコツを会得したので、スムーズに業務をこなせています。

▲Top